あれは名古屋に姪に逢いに行った帰りだった。
いつものように真っ暗に閉ざされたバスの中で
ここ数日間の疲れを背中に感じながら浅い眠りについてしまう。
小さな女の子が子供の僕の前に立っている。
「どこいくん?」
「どこいこうか」
そんな真夏の風景だった。
「じゃぁいつもの所へいこうか」
「うん」
と二人は坂道を歩き始め
進むにつれその道は赤から始まりオレンジ黄色と
輝きながら七色に移り変わっていく。
最近は見ることはない
子供の頃から何回も見ている夢だった。
「どこ」へでもいけると思っていたあの頃
「なんでも」出来ると思っていたあの頃
ちょっぴりの安堵とじんわりした寂しさが
私の中に残っていた。