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「そらそうなんやろうけどカッキンと私はちょっと違うんよ。私先日おじいちゃんの五年祭に行って来たの。フェリーに乗って20分ほどの島に今は誰も住んでへんけど戦後におじいちゃんが自分で建てた家が有るのね。そこは子供の頃に遊びに行った時の想い出がいろいろ詰まってる場所でもあるんやね。」 |
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「かなり田舎みたいじゃけど。でもいつも居た人に会えんようになるのは本当にさびしいけーのー。」 |
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「でもねそこに行くともう居なくなった筈のおじいちゃんを感じる物が沢山あるの。洋服掛けに掛かった帽子や湯飲みの乗ったテーブル。海水浴から帰ってきた時に足を洗った洗い場とか色々眼に飛び込んでくるの。カメラを構えるとそこの風景や物におじいちゃんと一緒に居た時の事を思いだすんよ。」 |
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「なんかいつの間にかええ話になっとるじゃんか。」 |
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「やけど本当はね私カメラを始める前は全くそんなこと感じもせーへんかったの。案外平然とおじいちゃんの死もうけとめれたし私にも何の変化も無かったんや。」 |
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「こりんは愛想はええが案外昔からそっけないけーのー。」 |
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「でも上手くは言えんのやけど写真を撮り始めてからは色々な事を感じれる様になったり気付ける様になった様な気がするの。だから写真を撮ることってとっても大切で楽しいの。もっともっといろんな物を撮って沢山感じたいし、きっと今までよりたくさんの想い出が作れる様な気がするの。」 |
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「と言うことは色々感じたり考えたり思ったりする事が出来る様になるから写真撮るってわけか。俺は今までどうやったら綺麗に正確に撮れるかばっかり考えてきたけー何かそんな気持ちを忘れてしもーとったんかもしれんのう。」 |
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「もちろん私だって綺麗に写真をとれたら良いと思うんやけど写真ってピンぼけしてようが多少アングル悪かろうが中には雰囲気が伝わってきて「これっ」って感じる写真いっぱいあるやろ。案外後で思い出す写真ってそんな写真も多かったりするし。それってやっぱりその写真からその時の事を色々感じれたりするからだと思うんやね。私がその時その場で感じた事大切に切り取れてる写真だったら私の中だけではOKやったりするんよ。」 |
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「ふーん。何となくじゃけどわかった様な気がするのう。「自分の為の写真」かー。そんなこと考えもせんかったのー。よ~っしゃなんとのうやる気がわいてきたど。さすがは未来のわしの妻じゃ」 |
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「誰が妻よ。」 |
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「でもわしが写真やめたら寂しいけーそんな話してくれたんじゃろ。」 |
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「そんなわけないやんか。あんたみたいな単細胞が側で落ちこんどると余計にむさくるしくって腹立つからよ。」 |
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「単細胞・・・おまえ将来の亭主にむかって!なんて口のき・・いってー」 |
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「あんたのほっぺたって案外伸びるのね。」 |